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メンタルヘルス

こころの健康管理


moji Iはじめに

 学生生活を送るためには身体の健康とおなじように「こころ」が健康でなくてはいけません。高校まではクラスという枠組みで生活していましたが、今は大学というバラバラな集団の中で、全く新しい人間関係を作っていかなくてはいけませんし、勉強も自分でカリキュラムを組み、自分で行動しないといけません。また私生活では一人暮しとなったり、自炊をしなくてはいけなくなったり、アルバイトを始めたり等々。「自分」で決定しなくてはならないことが大変多くなります。学年が進んでくると修得単位、進級・留年、卒業論文、就職等次々と問題が襲いかかってきます。ほとんどの学生は上手に適応し、楽しく学生生活を送ることができています。しかし、なかにはうまく適応できず、苦しみ、悩み、退学したり、病気になり治療を受ける人も出ています。こころに何か引っかかるものを感じたときに、役立てればと思い、以下こころの健康に関する事柄を述べてみました。


moji IIこころの健康とは?

 こころの健康の明確な定義はありません。人それぞれに個性があり、価値観が違い、理想が異なっているからです。ただ悩みがないから健康という消極的なものではなく、

1.自分でマイナスの性格と思っている点すべてを否定するのではなく、自分の個性の一部として自覚し、生きることができるか
2.他の人と心の通う人間関係を作ることができるか
3.社会のなかで自分らしく、柔軟性を持ち、能力を生かして生きて行かれるか

がこころの健康の重要な要素となります。

大部分の学生は健康と不健康?の間を行きつ戻りつしながら成長していくものです。


moji IIIストレス

1.ストレスって?
 こころの健康を蝕む大きな要素に、「ストレス」があります。日常ストレスという言葉を良く使いますが、ストレスって何でしょう。
 「ストレス」とはさまざまな出来事「ストレッサー」が加わったことによって体や心に引き起こした“ひずみ”をいいます。そのひずみが、体や心に引き起こす具体的な変化を「ストレス反応」と呼びます。問題になるのはストレスという抽象的なものでなく、具体的なストレス反応の数々なのですが、それらをまとめてストレスと呼ぶ場合が多いようです。ストレッサーが加わるとストレス反応としてさまざまな体の不調や病気、こころの不調や病気が現れます。

2.ストレッサー
 人はまず、苦痛として感じるストレス反応ばかりにとらわれます。その原因となっているストレッサーに注意を払うことを忘れてしまいがちですし、ストレスに気づかない場合も多いようです。しかし、ストレッサーがなくならないと、ストレス反応もなくなりません。
 大多数の人にとって、毎日がストレッサーだらけなのです。一見本人にとってうれしいこと、楽しいこともストレッサーになることがあります。
 気づきはなくても、体やこころの不調に直接つながりがちな、ストレッサーに次のようなものがあります。

1. 生活環境に大きな変化があったとき...一人暮し、入学、経済状態の変化
2. 人間関係が大きく変化したとき...人との別れ、新しい集団への参加
3. 生活習慣が不規則で、乱れているとき...睡眠不足、食事の不摂生、運動不足など

その他現代の特徴としては、
1. 環境汚染、環境ホルモン、オゾン層の破壊といった環境や生きていく条件の悪化
2. コンピュータ、通信機器の発達による情報の洪水や、スピード化
3. 核家族化や個人主義に伴う人間関係の希薄さ
 これらが複合的に作用し、ストレス反応として現れるのです。

moji IV心身症

 心身症は、ストレスに関連して起こる体の不調、病気をいいます。その種類は全科にわたってあり、いうなれば、あらゆる病気の発症や経過にストレスが関与しているといっても過言ではないのです。下の表に主なものを紹介しました。またストレスは免疫の働きをも弱めてしまいます。そうなると風邪などの感染症や、がん、喘息、リウマチなど免疫システムの異常にかかわる病気もストレスが要注意になってきます。服薬などの治療だけでは治りにくく、体の治療と共にストレスへの配慮をしてはじめて良くなるものです。

神経系偏頭痛、自律神経失調症
循環器系高血圧症、低血圧症、不整脈
呼吸器系気管支喘息、過換気症候群
消化器系口内炎、胃十二指腸潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎
内分泌・代謝系肥満症、糖尿病、甲状腺機能亢進症
眼・鼻関係原発性緑内障、メニエール症候群
骨・筋肉系慢性関節リュウマチ、書痙
皮膚関係円形脱毛症、慢性蕁麻疹
泌尿器系頻尿
産婦人科系月経困難症、無月経


moji Vこころに現れる病気

 ストレスがこころに現れる病気として、うつ病、心気症、ヒステリーなどがあげられます。

うつ病
 抑うつ状態(常におさえつけられているような気分が重く沈んだ状態)や、意欲の低下、無気力、集中力・注意力の低下が現れ、日常の生活に支障をきたす状態をいいます。
 早期発見のポイントとしては、精神症状が出る前に、身体症状が出てくることが多いので、その症状を見逃さないことです。

身体症状には
 睡眠障害:良く眠れない、早朝覚醒(早朝に目が覚めてそれから眠れない)
 摂食障害:食欲がなくなる、無理に食べても砂をかむようでおいしくない、吐き気
 下痢・便秘:下痢が続いたり、便秘が続いたり、下痢と便秘を交互に繰り返す
 体重減少:1ヶ月の間で2〜3kg減少したら要注意
 体の痛み:頭痛、肩こり
 倦怠感・疲労感:非常に疲れやすく、少し動いただけで横になりたい
精神症状には
 朝の憂うつ:朝から憂うつな気分になる。夕方になると気分が良くなる
 悲観的になる:ひとりで考え込み、必要以上に自分を責める
 意欲減退:やる気がなくなる。自分ではやらなければと思っても、体が動かない
 自殺を考える:自分を追いこみ、思いつめてしまう
 以上のような症状はうつ病でない場合もよく見られますが、その程度が極端に強かったり、長引くような場合は早い受診が必要です。

 以下の病気についてはその症状だけを記載します。

心気症
 ちょっとした体の変化や異常感、たとえば、動悸、発汗、わずかな痛み、たまに出る咳、などを重い病気の証拠であると自分勝手に思いこみ、何らかの病気を発見してもらうために、あちらこちらの病院を受診し体の健康を保証されても信じることができない状態をいいます。

ヒステリー
 複雑で、多彩な体や、心の症状が出てきますが、訴えに一貫性がなく、不自然なわざとらしさがあり、周囲の状況によって軽快したり、悪化したりする。その症状には医学的矛盾がみられる。


moji VIストレス対策

 何がストレスになっているかをいち早く見極めることができれば、ストレスを蓄積しないで解消するてだてが見つかるはずです。
 ストレスはまずストレッサーがあって、それを受け止めて内部処理をして、ストレス反応として出てくるというプロセスが考えられています。そして受け止め方以降のプロセスのすべてで個人差があり、同じストレッサーでも人によってストレスになったりならなかったりするのです。

1.ストレス解消の方法は?
 今、自分がストレス状態にあることを認識し、何らかのストレッサーを抱えていることに気づけば、ストレス対策の大半は終わったようなものです。
 まず、基本的には十分休養し“快眠、快食、快便”など、体調を整える必要があります。
 リラックスできる暮らしの工夫を身につけましょう。気楽に楽しめる趣味をいくつか持ち、思い切り気分転換ができれば最高です。
 それから、ひとり苦しまないで、誰かに相談をしましょう。それもできるだけ多くの支援者を自分の周囲にみつけること。
 それから素直な感情表現で悩みを潜在化させない。普段からよく人と会話をし、自分を理解してもらう。
 自己否定をしない、こうあるべき、こう考えるべきと自分に押し付けず感じたままを受け入れましょう。
 打ち明ける相手がいて、話しただけで簡単に解決がつく場合、自分だけではなかったとほっとできることもあるでしょう。しかし内容によっては他人に打ち明けにくいものです。そんな時利用したいのが、学生相談室、保健センター、保健室です。個人の秘密は守ってくれますし、自分自身を見つめなおし、成長する手助けをしてくれます。どんなささいな事柄でも遠慮なく相談してみましょう。

2.ストレスは生きていくために必要不可欠?
 ストレスも悪いことばかりともいえません。スポーツでの観戦者の声援(ストレッサー)は、すべて自分を応援してくれているのだと受け止め方を変えて成績を上げるとか、期限までに提出しなければならないレポートも、時間の余裕がある間はなかなかできなかったものが“明日までに”というストレッサーがかかることで集中力が増し、完成させてしまうという経験があると思います。
 ことほどさように、ストレスは大きなこころのエネルギーになります。スポーツや勉強で成果を上げるにはストレスは不可欠です。

 こころの病気が増える背景として、ストレサー自体が増えていること、それにも増してストレス耐性が弱くなっている傾向があります。
 ストレス耐性が弱くなった理由として、ひとつには物質的に豊かで、がまんする必要がなくなり、欲しいものが簡単に手に入る。人間は欲求不満でそれをがまんしていると心に葛藤が生じます。がまんしすぎるのも問題ですが、葛藤があって初めて自分の内面的な悩みが意識され、それと闘うという心の動きが出てくるのです。それがないと、なにかのときに簡単に折れてしまう、もろさになります。

ふだんから適当なストレッサーを受けているほうがストレス耐性ができて良いのです。
ストレスとの付き合い方考えてみませんか。


ひろしま身近なこころの専門医(広島県精神神経科診療所協会 提供)

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