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キャンパス万葉花
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広島女学院大学文学部
日本語日本文学科

(文学部事務室)

〒732-0063
広島市東区
牛田東4丁目13番1号
TEL(082)228-0386
FAX (082)227-4502



日本語日本文学科教員の森 斌(あきら)教授による「キャンパス万葉花」。
『万葉集』にある「花」を題材とした歌を、季節ごとに紹介しています。


No.10 壺すみれ 「春」

「山吹の咲きたる野辺のつぼすみれこの春の雨に盛りなりけり」
(一四四四)


ツボスミレとは、花の形が家大工の使用する墨壺に似ているからスミレに同じという説もあるが、現在いうところのタチスボスミレとも考えられる。

スミレは、葉が長い。しかし、ツボスミレは、葉の形が丸く、花色の紫も淡い。さらに晩冬から仲春に山道で何気なく咲いている。歌は、春雨が開花を促すということから、花の盛りをうたう。


No.09 くず 「秋」

「女郎花佐紀沢の辺のま葛原いつかも絡(く)りて吾が衣(きぬ)に着む」
(一三四六)


葛は、たくましい生命力からアメリカに輸出された植物である。根粒バクテリアを持つ豆科であり、不毛な土地にも繁殖する。万葉集では葛の繊維で衣を作った。

葛の葉は、裏が白いので、飜っている様も風情があるが、花はじっくり見ていると紫色で美しい。

 

No.08 チガヤ 「夏」

「わが君に戯奴(わけ)は恋ふらし給(たば)りたる茅花ははめ(食)どいや痩せに痩す」
(一四六二 大伴家持)


生でもっとも生命力のある植物といえば、茅の名前をあげる人もいる。万葉集の茅は、「ち・ちばな・つばな」という名称で登場する。

茅を食べて痩せたり太ったりする物でもないが、若い茅はほんのりと甘い。万葉らしい歌であり、家持は痩せた武人であったらしい。

 

No.07 すみれ 「秋」

「春の野にすみれ摘みにと来し我ぞ野をなつかしみ一夜寝にける」
(山部赤人 一四二四)


万葉集のスミレは、「すみれ」と「つぼすみれ」の二種類です。春一番に咲いているのは、ツボスミレの類です。スミレは桜と重なります。

どうして春菜を採りに来て一晩野宿してしまったのか、風狂の心でしょうか。このスミレは、食べたのか、花を観賞したのか、なかなか興味が尽きません。

 

No.06 もみち(黄葉) 「秋」

「ま草刈る荒野にはあれどもみちばの過ぎにし君が形見とぞ来し」
(柿本人麻呂  四七)


万葉では、一般的に「もみち(黄葉)」といいます。女学院のキャンパスは、紅葉の名所です。とりわけさくら、ハナミズキ、銀杏、メタセコイアが色づく十一月から十二月は、牛田山全山が錦です。

父の形見の地である荒野たる安騎野に文武天皇が狩りのために訪ねた時の柿本人麻呂歌です。狩猟をするのは、天皇になるための通過儀礼的な意味もありました。

 

No.05 萩 「秋」

「我が丘にさお鹿来鳴く初萩の花妻問ひに来鳴くさ男鹿」
(大伴旅人 一五四一)


万葉集には、「萩」の漢字はない。榎と椿がありながら、柊もない。しかし、女学院のキャンパスには、木偏の春夏秋冬の植物は全てあります。ちなみに万葉集で一番多くうたわれたのが「萩」の花です。

萩の花を鹿の妻と見立てています。萩と鹿との結びつきが万葉人に意識されていたのでしょう。雄の鹿は妻である萩に引き寄せられていたのでしょう。

 

No.04 紫陽花 「夏」

「言問はぬ木すらあぢさゐ諸弟らが練りのむらとに欺かれけり」
(家持 七七三)


万葉集の夏は、涼しさを求める歌が多い。灼熱にたちむかうよりも、いかにそれから逃れられるかに喜びを見いだした。

朦朧体などという梅雨も近代絵画と異なり積極的に芸術の対象になりにくかったが、万葉の特質として古典にはきわめて珍しい植物として「紫陽花」がうたわれている。

 

No.03 卯の花 「夏」

「卯の花の咲く月たちぬほととぎす来鳴き響(とよ)めよふふみたりとも」
(大伴家持)


初夏を飾る花は卯の花です。ホトトギスと一緒に詠まれますが、花も鳥もキャンパスの風物です。

大伴家持は、越中(富山県)でその季節の到来を待ち望みました。

 

No.02 サクラ 「春」

「あしひきのやまさへ光り咲く花の散りぬるごとき吾大君かも」
(大伴家持)


桜は、「咲く」と「ら」からなる言葉です。花の代表です。

大伴家持の挽歌「あしひきのやまさへ光り咲く花の散りぬるごとき吾大君かも」では、死と繁栄が桜に込められています。

 

No.01 ウメ 「春」

「春さればまづ咲くやどの梅の花ひとり見つつや春日暮らさむ」
(山上憶良)


「椿」は春の木です。しかし、春といえば、万葉集では「梅」になります。

「ウメ」も「バイ」も中国語ですから、中国から輸入したのですが、貴族の庭園でこぞって白梅ばかりが植えられました。

 

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