人間生活学部 生活デザイン学科 ニュース

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生活プロデュース領域

本学学生による干支をデザインしたラベルを冠した新酒が今年も発売されます。12月13日(金)の蔵出しを前に、どのように今年は取り組んだのかをご紹介したいと思います。

これは企業と大学が連携して地域を盛り上げるデザインプロジェクトの1つ「干支ラベルデザインプロジェクト」として2017年から取り組んでいるもので、今年は「地域連携デザインセミナーⅠ」「特別セミナーⅠ」という授業とも連携して進めました。連携先は西條鶴醸造株式会社(東広島市)です。

授業では、ラベルやパッケージデザインに関わる講義を受けたり、実際に酒都・西条を訪れ、酒蔵の見学や街並みの観察を通し、地域のデザインにも触れたりしました。

seide-et01.jpg(地元ガイドの方に案内してもらいながら、酒蔵巡りをしている様子)

東広島に馴染みのなかった学生はもちろん、地元が西条だという学生もガイドさんと一緒にまち歩きをすることで、知らなかったことや新鮮な街のデザインに出会うことができました。

このような活動を経て、学生たちは手描きやグラフィックソフトを使用して、ラベルデザインに取り組みました。

今年は授業履修者以外からも応募があり、46点の作品から西條鶴醸造株式会社による選考が行われ、最優秀賞が決まりました。

そして、先日西條鶴醸造株式会社から今年の実用化作品のサンプル瓶が届きました。

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(2020年干支ラベル新酒サンプルと実用化作品)

2020年の干支はネズミ!このデザインは宇都宮祐希さん(生活デザイン・建築学科3年)によるもので、「白ネズミが子孫繁栄の象徴であることから、健やかな1年になることを祈り、大切な人と新年の祝いとお酒も楽しめるよう願いを込めたデザイン」がコンセプトです。

「2020」という数字は、お酒がお米を原料にしているというところから、米粒をイメージしたフォントで、こちらにも工夫が見られます。

3年分のデザインを並べてみると、デザインの一貫性とオリジナリティが分かりますね!

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(2017年 戌(いぬ) 2018年 亥(いのしし) 2019 子(ねずみ)のラベルデザイン)

この干支ラベル新酒は12月13日(金)から広島県内の酒販店、百貨店、ショッピングセンターなどで販売されます。見かけたらぜひお手に取ってご覧ください!

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2019年9月2日~13日の12日間の日程で生活デザイン学科の国内フィールドワークを実施しました。

旅のテーマは「日光と徳川ゆかりの文化遺産」。

「東照宮」をキーワードに名古屋・久能山・上野の東照宮と、日光の世界遺産2社1寺ほか文化遺産を訪ね、歴史・美術・建築について実地に学ぶとともに、日光街道などを実際に歩き、前近代の旅を体感しました。

その様子を7回にわけて、紹介します。

7・8日目 日光

9月8日(日)

7日目はうるし博物館、金谷ホテル、日光田母沢御用邸へ行きました。

日光駅から大谷川(だいやがわ)を渡って、山の方へ少し登ったところにうるし博物館があります。

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ここでは、さまざまな漆の作品や、作品が出来るまでの工程などの展示がありました。小西美術工藝社という文化財の修復なども手がける会社の博物館で、日光だけではなく平泉の中尊寺金色堂などの仕事もしているそうで、その試作品などが展示されていました。実際に触ることができた漆の壺はとても艶があって触り心地もよく、漆の美しさを感じました。
一本の漆の木からとれる樹液はほんの少しであることを知り、漆の貴重さも感じました。

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近々、閉館して、ネット上の展示のみになるそうで残念に思いました。

昼食は金谷ホテルで食べました。

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全国でも数少ないクラシックホテルのひとつで、そのメインダイニングという、普段と違う食事の雰囲気で緊張しましたが、どの料理も美味しかったです。和洋折衷の建築のホテル内には、いたるところに彫刻が施されており、日光東照宮など日本建築の意匠が散りばめられているようです。

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日光の世界遺産2社1寺の手前には大谷川にかけられた神橋という橋があり、拝観料をおさめて渡りましたが、先生はここで二荒山神社の焼き印がある木の杖(金剛杖)を買っていました。フィールドワーク後半の旅の間中、持ち歩くのは邪魔にならないかと心配になります。

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神橋は、日光を開いた奈良時代の勝道上人が激流を渡れずにいると、2匹の蛇が絡み合って橋になったという伝説がある朱塗りのアーチ型の橋ですが、明日お参りする二荒山神社の一部で、かつては神事のときや、将軍の社参、天皇のお遣いの勅使などだけが渡ったそうです。

日光田母沢御用邸は約1,300坪という大きな建築面積をもっている建物で、御用邸で使われた建築技術や伝統を伝える場となっています。

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大名紀州徳川家の江戸屋敷や、日光の銀行家の別荘、大正時代の新築部分など、いろいろな時代のいろいろな建物が混在していました。

天皇の別邸である御用邸は各地にあり、日光田母沢御用邸は大正天皇の御座所、御学問所などに使われました。ビリヤードが置かれた御玉突所と呼ばれる部屋があることには驚きました。

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部屋だけでなく庭園も綺麗で、どの季節でも楽しむことができるようです。

今日の移動範囲は日光市内だけで広くありませんでしたが、たくさんの美しい場所があることに気づけた日になりました。

(2年 神田 真歩)

9月9日(月)

今日は一日中、日光社寺文化財保存会の高橋俊雄さんにお世話になりました。
昨年、先生が二荒山神社の調査に呼ばれて、高橋さんと知り合い、今回も案内をお願いしたそうです。

まずは保存会に行って、保存会と日光の社寺の保存の歴史についての説明を受けました。

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1879年に発足した保晃会が現在の保存会の前身の組織であり、1970年から保存会になりました。建造物のみの修繕を行っていて、漆職人・彩色職人の方が6人、高橋さんを含む設計管理の方が6人の12人で実務にあたっているそうです。

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建造物の傷み具合に合わせて、半解体にして傷みが進んだ部分だけを交換するなどして修理しているそうです。保存会では以前から国産漆のみを使用するようにしていたところ、最近、文化庁が日光以外でも文化財の修理の際には出来るだけ国産漆のみ使用することにしたそうです。しかし、実際は国産だけでは漆が足りないため上塗りだけ国産を使用することになってしまうこともあると言います。

漆は15年から20年かけて1本の木を育て、そこから1度だけ漆を採るともう採れなくなってしまうことは、昨日のうるし博物館で学びました。高橋さんによると、国内では年間で2.4トンの漆が採れていたのが、採取する人の高齢化もあって、生産量は減少しつつあるそうです。その漆を、日光では年間500㎏から600kg、全国の約5分の1を使用しているとのことでした。

その後、高橋さんのご案内で、修理工事中の二荒山神社本社本殿を訪れました。

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日光に東照宮が来たことをきっかけに、二荒山神社は移動されていて、何度か建てたままの状態で「曳き屋」という方法で位置をずらしたり、屋根など一部改変されたりしているそうです。しかし、現在の東照宮よりも早い、当初の東照宮と同時期に建てられた日光山内で最も古い建物のひとつだと言います。

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修理現場では、足場にのぼって交換した木の焼き印や、樽木、銅板などを間近に目にすることができました。また、彩色途中のところでは、どのような順序で塗っていって仕上げるのかその工程も見ることができました。屋根だけで60kgの漆を使うそうです。

となりの輪王寺常行堂を参拝後、昼食をとりました。代々日光の社寺の漆の御用をつとめるお家がやっているお土産屋さん兼食堂で、2社1寺の境内のなかにある唯一のお店だそうです。

昼食後、日光東照宮や五重塔を見学しました。

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「見ざる言わざる聞かざる」で、有名な神厩や陽明門、家康のお墓、薬師堂の鳴竜をまわりましたが、東照宮でも本殿の修理工事が行われており、その現場も見せていただきました。

次に大規模な修理をするとすれば200年後のことだそうで、今回のフィールドワークに参加したからこその貴重な体験となりました。

最近修理を終えたばかりの日光山輪王寺三仏堂(金堂)、徳川家光の霊廟大猷院に行き、そこから二荒山神社の滝尾神社まで足をのばし、四本龍寺、本宮神社、本宮別所も案内していただき、もりだくさんな一日が終わりました。

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短時間で駆け足でしたが、高橋俊雄さんのご案内のおかげで世界遺産を満喫することができました。

(4年 渡邉 菜穂)

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④5・6日目 宇都宮~日光街道

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2019年9月2日~13日の12日間の日程で生活デザイン学科の国内フィールドワークを実施しました。

旅のテーマは「日光と徳川ゆかりの文化遺産」。

「東照宮」をキーワードに名古屋・久能山・上野の東照宮と、日光の世界遺産2社1寺ほか文化遺産を訪ね、歴史・美術・建築について実地に学ぶとともに、日光街道などを実際に歩き、前近代の旅を体感しました。

その様子を7回にわけて、紹介します。

5・6日目 宇都宮~日光街道

9月6日(金)

午前は、宇都宮で宇都宮城址の晴明館の歴史展示室、宇都宮二荒山神社、大谷(おおや)資料館を見学し、午後は日光街道徳次郎宿付近の散策をしました。

晴明館には、宇都宮城と城下町の出土品やミニチュア模型、歴史年表などがあり、当時の様子を見ることができました。城址はほぼ市街地に飲み込まれて、一部、復元のような新たな創作のような櫓が建てられていました。

宇都宮二荒山神社は豊城入彦命を祀った神社です。大きな鳥居とそこから続く男坂が印象的です。境内は神門、本殿、拝殿、神楽殿、明神の井があります。神門から拝殿までも広く、神社を見渡すことができたのが良かったです。

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大谷資料館では地下採掘場跡に入り、大谷石の採掘現場として使われた様子を間近に見ました。

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広さは約2万平方m、深さは平均30m、最深の部分は地下60mであり、平均気温は8度前後の幻想的な空間でした。天井に穴が空いている箇所が所々にあり、暗い洞窟の中に日光が入ってくるところなどは特に神秘的でした。江戸時代中期から1959年頃まで手掘りで採掘が行われており、資料館でその当時の道具や服装を見た後での見学だったため、その作業の苦労がより分かり感動しました。

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1959年からは採掘の機械化が始まり、実際に石に機械の跡が見られました。採掘された大谷石は近代建築三大巨匠のひとりフランク・ロイド・ライトが旧帝国ホテルの建材に利用したことで有名です。

日光街道では街道沿いにある智賀都神社を見学しましたが、ここは事前学修で読んだフランス人エミール・ギメによる『明治日本散策 東京・日光』で1876年にギメが立ち寄ったかもしれない神社です。

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日光街道にはところどころ杉並木が見られ、江戸と日光の間を将軍や大名が参拝のために往復した当時の街道の様子を体感することができました。

(4年 中島 咲子)

9月7日(土)

今日は日光街道で日光の一つ手前の宿場町、今市と日光だいや川公園・だいや体験館へ行きました。

東武線で上今市まで乗って、そこからかつての日光街道のおもかげを残す日光杉並木街道に出ましたが、全37kmにわたって、断続的に遊歩道のように整備されています。道の両側にそびえ立つ杉並木は徳川家康の忠巨松平正綱が20年あまりの歳月をかけて植えたものだそうで、樹齢は約370年から380年と言われているそうです。

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杉並木街道の保護と地域の文化を伝承するために整備されたという杉並木公園の遊歩道をしばらく日光方面に向かって歩きましたが、途中、江戸時代の名主屋敷や報徳仕法農家(レプリカ)が建てられていました。そこから大谷川(だいやがわ)沿いのだいや川公園に寄ったのち、ふたたび杉並木に出て、江戸方面に下今市に向かって散策しました。

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なお、報徳仕法農家の二宮尊徳は、薪を背負って本を読む二宮金次郎像で有名ですが、小田原市栢山村の農家に生まれ、幼いころに父母と死別するも、くじけることなく懸命に働き、23才で家の再興を成し遂げた人物です。のちに、幕府の役人となり、日光御神領の復興に力を尽くし、今市の報徳役所にて70歳の生涯を閉じたそうで、日光ゆかりの人だったと初めて知りました。

日光だいや川公園では園内のだいや体験館に行きました。ここには日光東照宮の精巧な模型があり、1923年から6年間をかけて制作された10分の1模型の傑作と呼ばれているそうです。

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陽明門をはじめとする建造物、眠り猫や本殿内の彫刻品など、構造はもちろん装飾や絵画にいたるまで実物をできる限り再現した精密な工芸作品で、体育館のような建物に実際の配置どおりに並べられて、その間を歩いて見て回ることができます。

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先生も、せっかくだから寄ってみようとあまり期待していない様子でしたが、行って観ると想像以上に見ごたえがありました。もっと宣伝したらいいのにとちょっと惜しく思いました。

明後日、実際に東照宮などを観に行きますが、そのまえに建物の概要を見られたのもよかったと思います。

(4年 伊勢田 麻有)

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③4日目 群馬世良田~足利~栃木

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⑤7・8日目 日光

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