人間生活学部 管理栄養学科 ニュース

管理栄養士として、食を通して寄り添うとは ―マイノリティの経験から― ~近藤寛子先生のお話~
行事

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 先月11月17日の木曜日チャペルでは、宗教委員の石長先生の司会進行で、管理栄養学科の近藤寛子先生がお話してくださいました。先生は、出産後すぐに娘さんのために、1カ月半の付き添い入院をされたそうです。そのときを振り返ってのお話をしてくださいました。付き添い入院とは、患者が子どもの場合、親が付き添って同じ病院に入院することを言います。

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 食に対して不自由な思いをし、食べたいものも食べられない、そもそも食べることすらできない、買い物にも行けない、という経験を、近藤先生は付き添い入院時にされたそうです。そういう経験をされる方はおそらくとても少なく、全体から見るとマイノリティの経験ともなりますが、それを実体験されて、管理栄養士として、それら少数の立場にある方々にも、もっと寄り添う方法があるのではないか、と思われたそうです。

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 近藤先生は、娘さんを出産後すぐに小児科から「付き添い入院をしてください」と言われ、娘さんと同じ病院に1カ月半、付き添う形で入院されることとなりました。

 付き添い入院の場合、食事はどうなるのかというと、入院しているのはあくまで娘さんですので、ご自分の食事は自分で用意しなくてはいけません。しかし、娘さんにつきっきりで面倒をみる必要があるので、病室の外へ出られるのは、保育士さんが見守りをしてくれる1日20分間のみでした。さらにコロナ対策のため、病院では、面会や外出、付添交代の禁止など、厳しい管理の下にありました。

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 食事用意の選択肢としては、病院併設のコンビニか、家族の差入れしかありませんでした。その状況で1カ月半過ごすことになったのです。

 付き添い入院中の1日の食事は、差入れがない場合には
〔朝〕パン,〔昼〕カレー,〔夜〕ラーメン
のような状況であり、食事の調達ができない時や、食べるタイミングがない時には、1日1食になることもある状況でした。食べたいものが食べられないのは辛さがあったそうです。

 それに対して、差入れをいただいた場合には、食事は、
〔朝〕パン屋のパン,〔昼〕三色そぼろご飯・サラダ,〔夜〕ご飯・野菜炒め
のようになり、心が安らぐとともに満たされた、とのことです。そして食事というものが、いかに生活の中で大きく、それが食べられないときに、どれほど大きいストレスとなり、精神的・肉体的に負担になるのかを痛感されたそうです。

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 1カ月半の付き添い入院生活においては、『1食でいいのでコンビニ以外の食べ物が食べたい』という思いとともに、『管理栄養士監修のお弁当配達があったらな・・・』との思いも抱かれたとのこと。

 管理栄養士が働く場所には、「病院」「学校」「福祉施設」「食品会社」「ドラッグストア」等がありますが、今回のご自身の経験を通じて、おそらく他にも、管理栄養士の需要がある場所は多いと思われたそうです。

 本学の管理栄養学科で掲げる「食を通してあらゆる人に寄り添う」とは、マイノリティの人を含めた全ての人に対しての、寄り添うことであり、既存の仕事だけではなく、様々な境遇の方への思いを広げることで、仕事の可能性は大きく広がると思われました。

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お話したいただいた近藤先生と司会の石長先生

 このお話に関連しては、弁当や保存食の宅配、付添い入院の方のサポートなど、心の安らぎや充足を提供できる、管理栄養士ならではの仕事が見出されました。近藤先生からは、「これらにも何らかの形で携わりたい」とのメッセージをいただきました。管理栄養士の働きは、全ての方を対象とした生活の中で、多方面で求められているようです。管理栄養士として働き、全ての方の幸せに貢献できると嬉しいですね。

 近藤先生、ありがとうございました。

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