人文学部 日本文化学科 ニュース

「国語科教育法Ⅳ」では、一昨年度よりデジタル教科書を用いた50分の模擬授業を受講生に課し、デジタル教材やデジタル機器を使いこなせる国語科教員の育成を目指してきました。

今年も前半は、デジタル教科書の様々な機能を用いた模擬授業とその検討を行い、学び合いを進めてきました。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で、12月から急遽オンライン授業の実施となりました。模擬授業をどうするか悩むところでしたが、これからの教員にはオンライン授業も求められる可能性が高いことから、Googlemeetを用いた50分のオンライン模擬授業の実施に踏み切りました。たいへんな課題だったと思いますが、受講生は工夫と努力を重ね、みごとに授業をやりきりました。

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チャット機能を駆使しての双方向的な交流、WordやPowerPointをうまく用いての板書、ポイントを押さえての画面共有や動画の使用など、多くの成果がありました。同時に、やはり対面でないためのコミュニケーションの難しさ、机間指導がができない中でのこの状況の把握の方法、チャットと音声の使い分けなどの課題も見えてきました。

受講生から出された気づきの一端をご紹介します。

○オンラインの模擬授業の準備に際して、まずはmeetの様々な機能を理解することから始め、オンラインだからこそ可能な授業内容について考えました。

○授業内容と並行して生徒からのリアクションが随時見られるという利点を実感しました。

○チャットを用いることで、一人ひとりの意見がより明確に理解できたり、コピー&ペーストすることで板書を短縮することができたりしたと思います。

○チャットでは、一時退出してしまうと消えてしまうことや、生徒の書き込む時間がばらばらでどこまで待てばいいか分からないこと、できた人の答えから見えてしまうことなどがデメリットだと思いました。

○生徒側で授業を受けているときは、先生や他の生徒の顔+PowerPointが見えていたので、まさかスライドショーにすると、PowerPointが全画面になるとは思いませんでした。また、解答をアニメーションで出すようにしていたので、編集画面で授業を進めるなど臨機応変に対応することができませんでした。

○特に縦書きが主である国語科で、そのような機能を備えたソフトを見つけることができず、ワークシートを使うことがあまり適切でなかったかもしれないと反省しました。

○画面共有する資料が複数ページにまたがってしまうと、生徒が見返したくてもできない点に気をつけなければと思いました。事前に配布できる資料は提示しておくなどの対応もいると思います。

○教師の表情がかなり暗く見えてしまうと感じました。ライトのあて方も工夫する必要があると思います。生徒が教師の表情を見やすくなる分、教師の表情が与える影響も大きいと思います。

成果を大切にし、課題の克服のための工夫を重ね、さらに授業力を伸ばして、オンライン授業もできる実習生として教育実習に望んでほしいと願っています。

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ウィズコロナ時代に入り、大学の授業もビフォーコロナになかった様々な制約を受けています。体温チェック、手指消毒、ソーシャルディスタンス、換気...。特にソーシャルディスタンスを保ちながらの授業では、口頭ディスカッション、ペアワーク、グルーブワークが難しく、これまでそのような活動を取り入れてきた授業は、方向転換を迫られることになりました。やむをえず、昔のような教員の講話中心型に切り替えた授業もあります。そのような授業も単調にならないようにパワーポイントのスライドを工夫したり、選択式問題で挙手させるといった活動を取り入れたりしています。ですが、やはり活動が難しいと感じるのは、外国語としての日本語の授業です。「読む」「書く」「聴く」「話す」の4技能のうちの「話す」の練習が今までのようにはいきません。そうした中、日本語教員養成課程の4年生が前期の事前授業で作成した教材を使い、本学の日本語の授業で実習を行いました。

「全体での発声練習はさせないでください」「教師役の実習生と学習者と間でソーシャルディスタンスを保った上での口頭のやりとりはよいですが、学習者同士での会話は入れないでください」と通常の語学教育では考えられない指示を実習生に与えた上での実習です。どんなにやりにくかったことだろうと思います。実習が終了してみて、私自身、実習生たちがもっと達成感を感じられるような指導が必要だったと深く反省しました。

ともあれ、前期は本当に対面で実習できるのかと危ぶまれていた4年生の実習が終わりほっとしています。

今回、実習生には、留学生からのニーズが比較的高い「ビジネス日本語」についての45分間授業をお願いしました。留学生は中国からの留学生、ベトナムからの留学生合わせて7名です。こちらがその授業風景です。

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取引先に電話をかけ、話したい相手を呼び出したり、それに対して答えたりするときの表現を学びました。

そして、最後には、留学生のみなさんに好きな色とその理由を紙に書いてもらい、実習生には今回の実習の感想を紙に書いてもらい、毎年行っている実習終了記念撮影を行いました。

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写真に写すと何が書いてあるか残念ながらよくわかりませんよね。黒と赤をあげてくれた留学生のものをサンプルとしてアップします。

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ほかにも「赤い色が好きです。明るい、元気な性格です」「ピンク色が好き、もものような味。人に幸せ!!!」「ピンクが好きです!♡活発で可愛いからです」「♡♡青い♡♡。気持ちが良くなる」という意見がありました。まとめると、赤2票、ピンク2票、青1票、黒1票(残念ながらこの日は1名欠席でしたので合計6票です)でした。中国やベトナムの人の一番好きな色は赤という先入観は捨てなければと反省しました。

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8月23日(日)開催の第4回オープンキャンパスでの模擬授業は、足立直子学科長による「大学で読む児童文学-芥川龍之介『魔術』を中心に-」でした。

タイトルにあるように、「大学で読む児童文学」は、高校までとどう違ってくるのかが、クイズ形式の和やかな展開の中で分かりやすく語られました。

受講生全員が声を出すことなく参加できるよう、写真のような手作りの回答札も用意され、コロナ対策を講じながらの参加型授業が和やかに進んでいきました。

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授業は、作品成立の背景、作者の人生をたどる中で、現代の感覚で作品の言葉にふれるだけではたどり着けない底深い読みを目指すものでした。また、授業者の言葉の端々から、芥川龍之介や近代文学研究への熱い思いが感じられました。

授業の結びでは、実利には直接は結びつかないが、人間がよりよく生きるための軸となる文学の価値が語られました。そして、「こんな時代だからこそ、大学で一緒に文学を学んでみませんか」というメッセージが届けられました。

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また、回答札がしおりに早変わりするという「おまけ」まであり、しおりには、芥川の肖像とともに「人生を幸福にするためには、日常の瑣事を愛さなければならぬ」という「侏儒の言葉」の中の一節が記されていました。

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